九尾の狐
九本の尾を持つ霊狐・妖狐として東アジアに広く知られる存在。日本では玉藻前に化けた九尾の狐が那須野で討たれ、殺生石になったという物語が特に有名。
年老いた猫が妖怪化した姿として語られる。現在は尾が二股に分かれた猫の姿が有名だが、伝承では人や老婆に化ける例も多い。
人間に化ける、夜に踊る、死人や人を襲う、飼い主になりかわるなどの話が各地に残る。
変身、人語、踊り、人間へのなりかわり、祟りなどの能力が語られる。
長く飼われた老猫が猫又になる、山へ入り猫又になるなど地域ごとに異なる条件が語られる。
猫又(ねこまた)は、年を経た猫が妖怪化した存在として日本各地で語られてきた怪異です。現在は「尻尾が二股に分かれた猫」の姿が代表的ですが、中世文学や民間伝承では、人間へ化ける、夜に踊る、人を襲うなど多様な猫又が登場します。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースには、各地の「ネコマタ」事例が収録されています。長く飼われた猫が猫又になる話、山へ入った猫が怪異になる話、人間へ化ける話など内容は一定ではありません。
「何歳になれば必ず猫又になる」という全国共通ルールがあるわけでもありません。
中世文学『徒然草』第89段には、「奥山に猫またというものがいて、人を食う」という噂を聞いた法師の話があります。
法師は夜道で何かに飛びつかれ、「猫またに襲われた」と恐怖しますが、実際には飼い犬だったという落ちです。この説話からは、当時すでに「猫また」という恐ろしい存在の噂が通じるものだったことが分かります。
現在は「飼い猫が長生きすると猫又になる」という説明が定番ですが、『徒然草』の猫または山中にいる恐ろしい怪物として噂されています。
中世の山猫的な猫またと、後世の老猫が妖怪化する猫又を、最初から同じ一つの設定だったとみなすのは慎重であるべきです。
各地には、猫が長く生きると妖怪になるという俗信があります。島根県の記録には、寺で飼われた猫が年を取り、猫又になって夜ごと袈裟を着て町へ出たという伝承があります。
猫の寿命や夜行性、不意に姿を消す行動など、人間には理解しにくい習性が怪異化の背景になったと考える説明もあります。
現在の猫又は、一本の尻尾が二股に分かれた姿で描かれることが多く、「又」という字と結びつけて理解されます。
しかし、民俗資料に残る猫又すべてが二本の尻尾を持つと記録されているわけではありません。二股の尾は非常に強い図像ですが、伝承上の絶対条件ではありません。
猫又の代表的な能力の一つが変身です。老婆や家人へ化け、本人になりかわる話が各地にあります。
福島県には、猫又が老婆を食べ、その老婆になりかわっていたという伝承があり、香川県などにも老猫が女性へ化ける類話が残ります。
猫が夜に人知れず踊る、人の言葉を話す、衣服を身につけるといった話もあります。昼間は普通の飼い猫なのに、人が見ていないところで人間のように振る舞うことが恐怖につながります。
身近な動物だからこそ、「本当は人間の知らない顔を持っているのではないか」という想像が怪談になりやすかったと考えられます。
猫や化け猫には、葬儀や死体へ近づき、死人を動かすという怪談もあります。こうした特徴は猫又と化け猫の物語で重なることがあります。
そのため「死体を操れば必ず猫又」「尻尾が二本なら必ず化け猫ではない」といった明確な分類は、昔の伝承そのものには存在しません。
現代では、「年老いて妖怪化し、二股の尾を持つものが猫又」「怪異を起こす猫一般が化け猫」と説明されることがあります。
これは整理として便利ですが、古い文献や地域伝承では両者の特徴が重なります。厳密な生物分類のように線を引くより、個々の資料が何と呼んでいるかを見る方が正確です。
「10年」「20年」など具体的な年数を挙げる説明もありますが、全国共通の確定した年齢はありません。長く生きた猫が不思議な力を持つという発想が先にあり、後から具体的な年数が語られる場合があります。
現在の飼い猫の寿命と、民間伝承上の「老猫」は同じ基準ではありません。
妖怪としての猫又が実在すると確認された科学的証拠はありません。一方で、猫に対する親しみと畏れが重なり、猫又・化け猫の話が中世から近代まで長く語られてきたことは文献と民俗資料から確認できます。
実在する猫の異常行動を一つの原因として猫又伝承全体を説明するのではなく、時代ごとの猫観を見ることが重要です。
猫又は、身近な動物が年を経て妖怪化するという点で、日本の動物怪異を考える代表例です。人面犬のような現代都市伝説とは成立時期も構造も異なります。
猫又は古い文学・地域伝承、人面犬は近現代の口コミ・メディアという違いを分けて読むと、怪異文化の変化が見えます。
九本の尾を持つ霊狐・妖狐として東アジアに広く知られる存在。日本では玉藻前に化けた九尾の狐が那須野で討たれ、殺生石になったという物語が特に有名。
大きく張り出した後頭部を持つ老人の姿で描かれることが多い妖怪。江戸時代の鳥山石燕『画図百鬼夜行』などに登場する一方、現在よく知られる『妖怪の総大将』というイメージは後世の創作・大衆…
雪の夜に現れる白い女性として日本各地に伝わる怪異。地域によって呼び名・姿・行動が異なり、小泉八雲『怪談』の「雪女」によって広く知られる物語像も形成された。
首が長く伸びる、または首が身体から離れて飛ぶ女性などとして語られる妖怪。江戸時代の考証では中国・東南アジアの飛頭蛮との関係も論じられ、国内にも多数の伝承がある。
日本の宗教・説話・民間伝承・芸能などに広く登場する怪異的存在。角・牙・金棒・虎皮の腰巻という姿が有名だが、時代や地域によって鬼神・山の怪・地獄の獄卒・人間の異形化など多様な意味を持…
大江山を根城とする鬼の首領として知られる伝説上の存在。御伽草子では源頼光らが山伏姿で潜入し、鬼に毒となる酒を飲ませて討伐する。茨木童子との関係や出生地には複数の伝承がある。
HorrorPortでは、論文・公的資料・新聞・博物館資料・書籍・公式情報などを区別して管理し、何を裏付ける資料なのかが分かるように表示します。噂を裏付ける資料は「噂が存在すること」の根拠であり、超自然現象そのものの事実認定ではありません。
国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース「ネコマタ」
本文末の参考資料として使用
本文末の参考資料として使用
国立国会図書館サーチ「説話教材の可能性―徒然草89段の一解釈」
本文末の参考資料として使用