妖怪、民間伝承

猫又

読み方: ねこまた

年を経た猫が妖怪化した存在として各地に伝わる妖怪。人や老婆に化ける、踊る、死人や人間を襲うなど多様な伝承があり、中世文学『徒然草』第89段にも「猫また」が登場する。

情報確認: 2026年10月5日

怪異プロフィール

読み方
ねこまた
別名
猫又、猫股、猫俣
怪異の種類
妖怪、民間伝承
地域
日本
時代
鎌倉時代、室町時代、江戸時代
舞台
家・住宅、山・峠、寺
モチーフ
動物
起源・成立
古典・文献、民間伝承、地域伝承
分類補足
中世文学と各地の老猫・化猫伝承を背景に持つ妖怪として扱う。現在一般的な『尻尾が二股』の図像だけを唯一の定義とはしない。

特徴・性質

主な特徴

  • 年老いた猫が妖怪になるとされる
  • 人間や老婆に化ける話がある
  • 夜に踊る伝承がある
  • 人や死人を襲う話がある
  • 『徒然草』第89段にも猫またが登場
  • 現在は二股の尻尾が代表的イメージ

姿・外見

年老いた猫が妖怪化した姿として語られる。現在は尾が二股に分かれた猫の姿が有名だが、伝承では人や老婆に化ける例も多い。

行動・特徴

人間に化ける、夜に踊る、死人や人を襲う、飼い主になりかわるなどの話が各地に残る。

能力・現象

変身、人語、踊り、人間へのなりかわり、祟りなどの能力が語られる。

出現条件・状況

長く飼われた老猫が猫又になる、山へ入り猫又になるなど地域ごとに異なる条件が語られる。

成立・由来

成立・伝承時期
中世以前から文献・民間伝承に見える
成立・伝承地域
日本各地。中世文学や各地方の民間伝承に登場し、特定の一地域だけを発祥地とするものではない。

猫又(ねこまた)は、年を経た猫が妖怪化した存在として日本各地で語られてきた怪異です。現在は「尻尾が二股に分かれた猫」の姿が代表的ですが、中世文学や民間伝承では、人間へ化ける、夜に踊る、人を襲うなど多様な猫又が登場します。

猫又とは

国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースには、各地の「ネコマタ」事例が収録されています。長く飼われた猫が猫又になる話、山へ入った猫が怪異になる話、人間へ化ける話など内容は一定ではありません。

「何歳になれば必ず猫又になる」という全国共通ルールがあるわけでもありません。

『徒然草』第89段にも「猫また」が登場

中世文学『徒然草』第89段には、「奥山に猫またというものがいて、人を食う」という噂を聞いた法師の話があります。

法師は夜道で何かに飛びつかれ、「猫またに襲われた」と恐怖しますが、実際には飼い犬だったという落ちです。この説話からは、当時すでに「猫また」という恐ろしい存在の噂が通じるものだったことが分かります。

昔から「老猫が化ける」だけだったのか

現在は「飼い猫が長生きすると猫又になる」という説明が定番ですが、『徒然草』の猫または山中にいる恐ろしい怪物として噂されています。

中世の山猫的な猫またと、後世の老猫が妖怪化する猫又を、最初から同じ一つの設定だったとみなすのは慎重であるべきです。

老猫が猫又になる伝承

各地には、猫が長く生きると妖怪になるという俗信があります。島根県の記録には、寺で飼われた猫が年を取り、猫又になって夜ごと袈裟を着て町へ出たという伝承があります。

猫の寿命や夜行性、不意に姿を消す行動など、人間には理解しにくい習性が怪異化の背景になったと考える説明もあります。

尻尾が二股になるのか

現在の猫又は、一本の尻尾が二股に分かれた姿で描かれることが多く、「又」という字と結びつけて理解されます。

しかし、民俗資料に残る猫又すべてが二本の尻尾を持つと記録されているわけではありません。二股の尾は非常に強い図像ですが、伝承上の絶対条件ではありません。

人間へ化ける猫又

猫又の代表的な能力の一つが変身です。老婆や家人へ化け、本人になりかわる話が各地にあります。

福島県には、猫又が老婆を食べ、その老婆になりかわっていたという伝承があり、香川県などにも老猫が女性へ化ける類話が残ります。

夜に踊る・人の言葉を話す

猫が夜に人知れず踊る、人の言葉を話す、衣服を身につけるといった話もあります。昼間は普通の飼い猫なのに、人が見ていないところで人間のように振る舞うことが恐怖につながります。

身近な動物だからこそ、「本当は人間の知らない顔を持っているのではないか」という想像が怪談になりやすかったと考えられます。

死人を操る猫の怪談

猫や化け猫には、葬儀や死体へ近づき、死人を動かすという怪談もあります。こうした特徴は猫又と化け猫の物語で重なることがあります。

そのため「死体を操れば必ず猫又」「尻尾が二本なら必ず化け猫ではない」といった明確な分類は、昔の伝承そのものには存在しません。

猫又と化け猫の違い

現代では、「年老いて妖怪化し、二股の尾を持つものが猫又」「怪異を起こす猫一般が化け猫」と説明されることがあります。

これは整理として便利ですが、古い文献や地域伝承では両者の特徴が重なります。厳密な生物分類のように線を引くより、個々の資料が何と呼んでいるかを見る方が正確です。

猫又は何歳でなるのか

「10年」「20年」など具体的な年数を挙げる説明もありますが、全国共通の確定した年齢はありません。長く生きた猫が不思議な力を持つという発想が先にあり、後から具体的な年数が語られる場合があります。

現在の飼い猫の寿命と、民間伝承上の「老猫」は同じ基準ではありません。

猫又は実在するのか

妖怪としての猫又が実在すると確認された科学的証拠はありません。一方で、猫に対する親しみと畏れが重なり、猫又・化け猫の話が中世から近代まで長く語られてきたことは文献と民俗資料から確認できます。

実在する猫の異常行動を一つの原因として猫又伝承全体を説明するのではなく、時代ごとの猫観を見ることが重要です。

動物が妖怪化する伝承と比べる

猫又は、身近な動物が年を経て妖怪化するという点で、日本の動物怪異を考える代表例です。人面犬のような現代都市伝説とは成立時期も構造も異なります。

猫又は古い文学・地域伝承、人面犬は近現代の口コミ・メディアという違いを分けて読むと、怪異文化の変化が見えます。

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研究資料・参考文献

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