『コンジアム』(原題:GONJIAM: Haunted Asylum)は、チョン・ボムシク監督による2018年の韓国ファウンド・フッテージホラーです。心霊系インターネット番組「ホラータイムズ」の一行が、怪談で知られる「コンジアム精神病院」へ入り、その探索をライブ配信する――という設定で進みます。
本作の強さは「廃病院が怖い」という一点だけではありません。視聴回数を伸ばしたい配信者、仕掛けられた演出、本当に起き始める異変、顔に向いたカメラと本人視点のカメラ、暗闇の中で何が映ったのか分からない画面。こうした要素を重ねることで、観客を「映画を見ている人」ではなく「配信を一緒に見ている人」に近づけています。
HorrorPortの確認方針:公開日・上映時間・監督・制作会社・キャスト・興行成績はKOFIC(韓国映画振興委員会)を中心に確認。監督の演出意図はKOFICの本人インタビュー、撮影場所はKOFIC/釜山フィルムコミッション系資料、実在病院をめぐる事実関係は韓国メディアの取材と裁判報道を参照しています。映画内の怪談設定と、実在した病院について確認できる事実は分けて記述します。
『コンジアム』の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原題 | GONJIAM: Haunted Asylum/곤지암 |
| 韓国公開 | 2018年3月28日 |
| 上映時間 | 94分 |
| 制作国 | 韓国 |
| ジャンル | ホラー/スリラー/ファウンド・フッテージ |
| 監督 | チョン・ボムシク(JUNG Bum-shik) |
| 製作 | Hive Media Corp. |
| 国際セールス | Showbox Corp. |
| 韓国での観客動員 | KOFIC作品DBで約269万人(2026年9月確認時点) |
KOFICの作品DBでは、2018年3月28日公開、上映時間94分、制作国は韓国、ジャンルはホラー/スリラーと登録されています。監督はチョン・ボムシク。主要キャストにはウィ・ハジュン、パク・ジヒョン、オ・アヨン、ムン・イェウォン、イ・スンウク、パク・ソンフンらが並びます。
ネタバレなしのあらすじ
心霊系インターネット番組「ホラータイムズ」は、怪談で知られるコンジアム精神病院を舞台にした特別ライブ配信を企画します。番組側は参加者を募り、複数人のチームで夜の廃病院へ入ります。
目的は、病院内を探索しながら怪談の真偽を確かめ、同時に大きな視聴数を稼ぐこと。ところが配信を盛り上げるため、番組側は参加者に知らせず一部の「怖い出来事」を意図的に仕込んでいます。
そのため序盤では、何かが起きても「番組の演出なのか」「本当に異変なのか」をすぐには判断できません。やがて仕掛けでは説明できない現象が重なり始め、病院内部とライブ配信の両方が制御不能になっていきます。
実在の「コンジアム精神病院」と映画の怪談は同じではない
ここは『コンジアム』を調べるうえで、最も注意したいポイントです。映画や一部の紹介文では、「患者42人が集団自殺した」「病院長が行方不明になった」といった怪談が語られます。しかし、これは確認された病院史として扱うべき内容ではありません。
韓国メディアの取材では、実在した病院はナミャン精神病院として運営され、1970年代に集団自殺が起きたわけではなく、1996年に閉鎖したとされています。The Korea Timesの2018年の記事は、経営難の中で院長が亡くなり、子どもたちが事業を継がなかったことなどを閉鎖の背景として紹介しています。
聯合ニュースも公開直前の記事で、映画内で語られる患者の集団自殺や院長失踪は実際にはなかったと報じています。また、病院建物の所有者は、映画によって怪談がさらに広がり不動産売却に影響することなどを理由に上映禁止の仮処分を申し立てましたが、裁判所はこれを退けました。裁判所は作品を明白なフィクションのホラー映画として扱っています。
事実と怪談の整理:「廃病院が実在した」ことと、「映画内で語られる怪談が史実である」ことは別です。HorrorPortでは、集団自殺・院長失踪・402号室の怪談などを、確認済みの歴史的事実ではなく作品設定・都市伝説として扱います。
実際の撮影場所はコンジアム精神病院ではない
映画は実在した病院の中で撮影されたわけではありません。KOFICや釜山フィルムコミッションの資料では、撮影には旧・釜山海事高校(Busan National Maritime High School)の建物が使われ、内部にコンジアム精神病院をイメージしたセットが作られたと確認できます。
BFIも、作品が実在のコンジアム精神病院をめぐる都市伝説から着想を得ながら、主な撮影は釜山の旧校舎で行われたと説明しています。つまり、映画の「実在感」は実在病院そのものを撮影したから生まれたのではなく、別の場所を使いながらカメラ・美術・音響で作り上げたものです。
監督はなぜライブ配信という設定を選んだのか
KOFICの監督インタビューで、チョン・ボムシクは、既にライブ配信が日常的なものになっていたため、この形式が自然に浮かんだと話しています。一方で「金のために危険な配信へ参加する」という設定に現実味があるか迷ったものの、オンライン動画で大金を稼いだ実例を知り、設定として成立すると確信したと説明しています。
この判断は作品の恐怖にも直結しています。参加者たちはただ廃墟へ入るのではなく、常に「見られている」「数字を稼がなければならない」という状況に置かれます。逃げるべき場面でも、配信を続ける動機が残る。ホラーの古典的な「なぜそこから逃げないのか」という疑問を、配信ビジネスの欲望で成立させているわけです。
『コンジアム』はなぜ怖いのか|HorrorPort恐怖構造
| 恐怖要素 | 作品内での働き | 怖さの種類 |
|---|---|---|
| 顔カメラ+主観カメラ | 周囲と人物の表情を同時に近い距離で見せる | 没入・逃げ場のなさ |
| ライブ配信 | 撮影をやめられない理由と、観客に見られている感覚を作る | 監視・承認欲求 |
| 仕込みの恐怖 | 序盤から「演出か本物か」を判別しにくくする | 認知的不安 |
| 廃病院 | 同じ廊下・部屋・暗闇の反復で方向感覚を弱める | 閉鎖空間 |
| 402号室 | 入ってはいけない場所として期待と不安を蓄積する | 禁忌・予兆 |
| 音響 | 見えない場所の異変を先に耳へ伝える | 聴覚的不安 |
| 視聴回数 | 危険より数字を優先する番組側の判断を促す | 人間的な怖さ |
1. 「自分で撮っている映像」に見せる
チョン・ボムシク監督のKOFICインタビューによると、本作には大きく4系統の映像があります。俳優自身が撮る映像、身体に装着したカメラによる顔の映像と本人視点、そして空間を捉えるCCTVです。監督は、少数のCCTVショットを除けば、ほぼすべてを訓練した俳優自身が計画に沿って撮影したと説明しています。
通常の映画撮影のように「カメラマンが人物を撮っている」感じが薄いため、観客はカメラの存在を忘れるのではなく、逆に「この人物がいま自分で撮っている」と意識させられます。それがライブ配信設定と噛み合い、映像の揺れや画角の狭さまで恐怖の一部になります。
2. 顔と視界を同時に逃げられなくする
BFIは、本作の特徴として身体装着型のカメラを挙げています。人物の顔に向いたカメラと、前方を見るカメラを組み合わせるため、観客は「何が迫っているのか」と「それを見た人物がどう反応しているのか」を近距離で体験します。
普通のホラー映画なら、恐怖対象を画面外へ逃がしたり、人物のリアクションだけに切り替えたりできます。『コンジアム』はその両方を同時に見せる場面が多く、観客が視線を逃がしにくい設計です。
3. 編集は「酔わないこと」と「緊張を切らさないこと」を両立させる
監督は編集で重視した点として、第一にリズムとテンポ、第二にサスペンスと緊張の維持、第三に観客の目眩を抑えながら緊張を落とさない程度の固定ショットと広角ショットを入れることを挙げています。
ファウンド・フッテージは、手持ち映像が続くほど「リアル」には見えても、見づらさが勝つ危険があります。本作はそこを編集で調整し、主観映像の没入感を残しながら、観客が状況を追える最低限の空間認識を保っています。
4. 音は、映像より先に「何かいる」を作る
監督は海外で作品が注目された理由について、映像だけでなく音が大きな役割を果たしたと語っています。廃病院は暗く、視覚情報が制限されるため、観客は小さな物音や声に敏感になります。
HorrorPortでは、本作の怖さを「何かを見せる映画」より何が見えるか分からない状態で、先に音を聞かせる映画に近いと考えます。暗闇の中で視線を動かしている間に音が入り、音の出所を探した瞬間に次の異変へつながる。この順序が緊張を持続させます。
5. 402号室を「見せない時間」が怖さを育てる
映画内の402号室は、最初から危険な禁忌として繰り返し意識させられます。監督インタビューでは、402号室を映画内で3回登場させ、そのたびに空間の印象を変える設計を考えたと語られています。天井と床に水がある独特の空間も、セットとCGを組み合わせて作られました。
重要なのは、部屋の内部そのものよりも、「まだ入っていない」「開けてはいけない」という時間が長いことです。ホラーでは、禁止された場所をすぐに見せるより、観客の想像に任せる時間が長いほど期待と恐怖が膨らみます。本作は402号室をその装置として使っています。
「配信のための仕込み」が恐怖を強くする理由
ホラータイムズ側は、配信を盛り上げるために一部の現象をあらかじめ仕込みます。この設定が優れているのは、登場人物だけでなく観客も「また演出だろう」と疑うようになることです。
つまり本作は、怪異の存在を信じ込ませるのではなく、最初に疑う癖を観客へ植え付けます。そこから、仕込みでは説明できない出来事を少しずつ増やしていく。恐怖のスイッチが「幽霊を見た瞬間」ではなく、「いまのは誰が仕掛けたのか分からない」に置かれている点が強みです。
興行面でも異例の韓国ホラーだった
KOFICの作品DBでは、2026年9月確認時点で累計観客動員は約269万人。2018年年間興行データでも約267万人を記録し、同年の韓国公開作品の年間ランキング上位に入っています。
KOFICの2024年の韓国ホラー特集は、本作が春の3月公開だったにもかかわらず予想以上の成功を収めたと振り返り、SNSで観客自身が体験を投稿したことも、作品のファウンド・フッテージ形式と相性のよいプロモーションだったと説明しています。
また公開直後のKOFIC監督インタビューでは、公開3週間で200万枚のチケットを販売し、『箪笥』以来の大きな韓国ホラーのヒットとして紹介されました。KOFICの後年記事では、ゾンビやオカルトとのハイブリッド作品を除けば、韓国ホラーとして非常に大きな観客数だったと位置づけられています。
どんな人に向いている?
- ファウンド・フッテージやPOV形式のホラーが好きな人
- 廃墟・心霊スポット系の恐怖が好きな人
- ジャンプスケアだけでなく、暗闇と音で追い詰められる映画を見たい人
- ライブ配信、YouTube、視聴数など現代的な要素が入ったホラーを見たい人
- 『箪笥』とは違うタイプの韓国ホラーを体験したい人
逆に、カメラの揺れや主観映像が苦手な人には向きにくい作品です。監督側も、固定ショットや広角を混ぜて目眩を抑える工夫をしていますが、作品の中心はあくまで一人称に近い映像体験です。
ここからネタバレあり|『コンジアム』の恐怖が後半で変わる仕組み
注意:以下は物語後半の構造と402号室に触れます。未鑑賞なら、ここから先は映画を見た後に読むことをおすすめします。
「仕込み」が通用しなくなる瞬間
序盤では番組側が怖がらせるために演出を仕込んでいるため、異変が起きても説明可能です。しかし後半になると、配信チーム自身が知らない現象が続き、番組をコントロールしている側と病院内にいる側の認識が崩れていきます。
この切り替えがあるから、観客は「最初から全部本物の怪異だった」と受け入れるより強く揺さぶられます。いったん偽物を知っているぶん、偽物では説明できない出来事が出た時の基準を失うからです。
配信を続ける欲望そのものが罠になる
ホラータイムズの企画は、恐怖体験そのものより「どれだけ見られるか」を価値にしています。そのため、危険が増しても映像が撮れている限り、撤退より配信継続を選ぶ力が働きます。
本作では超自然的な存在だけでなく、数字を追う人間の判断も恐怖の原因です。視聴者に見せるための恐怖演出が、いつの間にか本物の危険から離れられない理由へ変わっていきます。
402号室は「真相を説明する部屋」ではない
402号室は映画内で最大の禁忌として扱われますが、そこへ入れば病院の歴史が論理的に説明されるわけではありません。むしろ、現実の空間そのものが壊れているような見せ方によって、観客が持っていた位置関係や時間感覚をさらに崩します。
この点で『コンジアム』は、怪談の謎を解く映画というより、怪談の内部へ入っていく体験を作る映画です。402号室は答えではなく、「もう帰れる世界とつながっているか分からない」という感覚を完成させる場所になっています。
見終えた後に確認したいポイント
- どの異変までが番組側の「仕込み」と説明できるか
- 配信本部と病院内部で、情報の食い違いがいつ始まるか
- 顔カメラと主観カメラが同時に使われる場面で、どちらを先に見ていたか
- CCTVの固定画面が入るタイミング
- 異変を「見せる」前にどんな音が入っているか
- 402号室が実際に映る前、何度その存在を意識させられるか
- 視聴回数への執着が、登場人物の判断へどう影響しているか
一度目は恐怖そのものを体験し、二度目は「観客の視線をどこへ固定したか」を追う。『コンジアム』は、撮影形式を理解してから見直すと、怖がらせ方の設計がかなり見えやすい作品です。
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参考・確認資料
- Korean Film Council:GONJIAM: Haunted Asylum (2018) — 公開日、上映時間、制作国、監督、キャスト、制作会社、興行成績
- Korean Film Council:JUNG Bum-shik of GONJIAM: HAUNTED ASYLUM — ライブ配信設定、カメラ方式、編集、402号室、映像・音の演出
- Korean Film Council:Cooling Off with K-Horror — 韓国ホラーでの位置づけ、興行・SNS反響
- Korean Film Council:Busan Film Commission interview — 旧・釜山海事高校での撮影確認
- The Korea Times:Controversial action-cam horror film ‘Gonjiam’ — 実在病院の閉鎖事情、映画内怪談との違い、撮影場所
- 聯合ニュース:1인칭으로 사실감 끌어올린 공포체험…영화 ‘곤지암’ — 集団自殺・院長失踪が実際の事件ではないこと、1996年閉鎖、撮影場所
- BFI:10 great South Korean horror films — 身体装着カメラ、ファウンド・フッテージ表現、ロケーション評価
研究資料・参考文献
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- 公式Web一般参考
- 公式Web一般参考
JUNG Bum-shik of GONJIAM: HAUNTED ASYLUM | Korean Film Council
- 公式Web一般参考
- 公式Web一般参考
- その他資料一般参考
Controversial action-cam horror film 'Gonjiam' sure to thrill and chill | The Korea Times
- その他資料一般参考
- 公式Web一般参考
- 新聞・報道作品情報

